相続土地国庫帰属申請の添付書類と作成のポイントについて解説

今回は、相続土地国庫帰属制度の申請の添付書類と作成のポイントについて、発出された施行通達に基づいて解説します。

相続土地国庫帰属の概要

相続土地国庫帰属制度は、相続又は遺贈(相続人に対するものに限る)により取得した土地について、その所有権を国に帰属させる、つまり引き取ってもらう制度になります。いわゆる所有権放棄とも言えます。

相続土地国庫帰属は、承認申請の却下事由に該当しないことを確認したうえで申請し、不承認となる事項について該当していないことが必要となります。

要は、建物や工作物が存在していたり、境界紛争や土壌汚染があったり、管理に過分の費用を要する土地や他人の権利が設定されているような土地は、国庫帰属の対象外となります。

申請は、承認の対象土地を管轄する法務局に対して申請書を提出することによって行います。

申請書類の作成代行のできる専門家は、司法書士、弁護士、行政書士の3者のみとなります。

相続土地国庫帰属申請の添付書類

申請書の添付書類

相続土地国庫帰属申請書に添付する必要のある添付書類は、以下のものになります。

① 承認申請者が相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により承認申請に係る土地の所有権又は共有持分を取得した者であるときは、当該者であることを証する書面(当該者であることが登記記録から明らかであるときは省略可)

② 法定代理人によって承認申請をするときは、戸籍事項証明書その他その資格を証する書面

③ 承認申請者が法人であるときは、当該法人の代表者の資格を証する書面(会社法人等番号を承認申請書に記載したときは省略可)

④ 承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面

⑤ 承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真

⑥ 承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真

⑦ 土地の所有権が国庫に帰属したことを原因とする国が登記権利者となる所有権の移転の登記を官庁が嘱託することを承諾したことを証する書面

⑧ 申請者の印鑑証明書(法人について会社法人等番号を提供した場合は、省略可)

添付書類作成のポイント

①相続又は相続人に対する遺贈により土地を取得したことを証する書面

上記①の対象土地の取得者であることの証明書は、事前に対象土地を相続により取得した所有権移転登記(相続登記)がなされていれば不要となります。

事前に相続登記がなされていないけれど、対象土地を相続により取得した者が国庫帰属申請をする場合に①の書類を添付します。

事前に所有権移転等がされているけれども登記原因が「遺贈」であったり、保存登記がされている場合には、相続又は相続人に対する遺贈により所有権を取得した者(=申請適格者)であるかどうかが不明なため、申請適格があることを証する書面の添付が必要となります。

事前に相続登記がなされている場合でも、登記上の住所氏名と申請者の住所氏名が一致しない場合は、同一性を証する書面(住民票、戸籍、附票等)の添付が必要となります。

④土地の位置及び範囲を明らかにする図面

国庫帰属申請の対象土地の位置と範囲を法務局に提示する図面を添付する必要があります。

この図面を基にして、法務局が現地調査を行いますし、申請却下要件である「境界(所有権界)が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地」に該当しないことを、この図面を基にして判断しますので、重要な添付書類です。

具体的には、法務局に備え付けの14条地図や公図、国土地理院の地理院地図などに申請者が認識している土地の位置及び範囲を示して作成することとなります。

なお、この図面により示すのは、あくまで「所有権界」であり、「筆界」ではありません。

つまり、申請者が自分が所有していると認識している土地の範囲と境界を示せばよく、法務局に備え付けられている地図や測量図等が示す筆界と一致していなくても問題ありません。また、隣接地との境界を復元測量により明示することも必要ではありません。

⑤土地の形状を明らかにする写真

国庫帰属申請の対象土地の全景及び近景を映したもので、上記④の図面との位置関係を記載したものを作成し、添付します。

これは、対象土地に建物や工作物等がないかどうか、実地調査の基礎資料とするために添付するものです。

なお、対象土地が広大である場合は、航空写真や複数の写真の組み合わせで対応することも可能です。ドローン等により土地の全景を撮影することは必要がありませんが、任意に提出することは可能です。

⑥隣接土地との境界点を明らかにする写真

申請対象土地と隣接土地との境界点を示すものの写真を撮影し、申請書に添付する必要があります。

具体的には、境界標、ブロック塀、道路のへり等の地物、簡易な目印などとなります。これらは、上記④の地図における位置関係を明らかにする必要があります。

これ境界点を示すものは、法務局の現地調査時に現地で確認ができるものである必要がありますが、境界標がない場合に、隣地と境界確定を行い、測量して境界標を設置することまでは必要ありません。



以上、相続土地国庫帰属の申請書の添付書類とその作成のポイントについて解説しました。

相続土地国庫帰属申請の手続きは、豊中司法書士ふじた事務所にご相談ください。

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