相続登記における必要書類である様々な登記原因証明情報と手続きについて解説。

今回は、相続登記における色々なパターンの登記原因証明情報とその手続きについて、解説します。

相続登記の添付書類である登記原因証明情報とは

故人(被相続人)が亡くなると、所有していた不動産の登記名義を移転させる(=相続登記)必要が生じます。

この相続登記は、令和6年4月1日からは法律上の義務となりますので、放置することはできなくなります。


相続登記を申請する際には、典型的には、以下の書類を添付する必要があります。

・登記原因証明情報

・住所証明情報

・代理権限証明情報

・評価証明書


上記の添付書類のうち、登記原因証明情報というのは、当該相続においてどのような法律上の根拠に基づいて、登記名義人となる者が所有権を取得したのかを証明する書類となります。

以下、登記原因証明情報ごとに、必要となる書面や手続きについて解説をしていきます。

戸籍、除籍、改製原戸籍一式

まず、相続が発生した直後は、被相続人の所有していた遺産は、法定相続人による遺産共有状態となります。これは、法定相続人が法定相続分によって、遺産を共有しているものとなります。

例えば、父が死亡し、相続人が母と長男と次男の場合、父が所有していた土地は、2分の1母、4分の1長男、4分の1次男という割合で、共有している状態となります。


この遺産共有状態のままで、法定相続分どおりに、各法定相続人の共有として相続登記をすることも可能です。

この場合の相続登記の登記原因証明情報は、

・被相続人の出生から死亡までの戸籍、除籍、改製原戸籍謄本一式

・各相続人の現在の戸籍謄本(又は抄本)

となります。


詳細は後述しますが、上記の戸籍類一式は、遺産分割協議や相続分の譲渡、相続放棄をして相続登記を申請する際にも、添付書類として必要となります。

法定相続情報証明

法定相続情報証明は、被相続人の出生から死亡までの戸籍、除籍、改製原戸籍、及び各相続人の現在戸籍を、法務局に提出することによって、法定相続人が誰であるかを証明する書類となります。

つまり、法定相続情報証明は、相続を証する戸籍一式と同じ効力を持つ書類ということです。

相続登記においては、上述した戸籍一式の替わりの書類として添付することができます。

また、法定相続情報証明は、各相続人の住民票又は戸籍の附票を添付し申請することによって、法定相続人欄に住所も併記させることが可能となります。

そうすると、この住所の記載が、相続登記申請に必要な住所証明情報の替わりの書類として効力を生じますので、住所証明情報の添付が不要となります。



法定相続情報証明は、法務局や銀行などの相続手続きの審査サイドで、戸籍のチェックを省略することができるようになりますので、審査の迅速化に寄与します。

また、複数箇所で同時並行で、相続手続を取ることができるようになるメリットもあります。

遺産分割協議書

遺産分割協議書は、相続直後の遺産共有状態を解消又は是認し、各遺産をどのように相続人間で分配するかに関する相続人間の合意を証明する書類になります。

遺産を誰にどれくらい分配するかは、原則として、自由に合意して決定することができます。

例えば、父が死亡すると、父が所有していた土地建物は、2分の1母、4分の1長男、4分の1次男という割合で、遺産共有している状態となります。

この場合、土地建物を母の単独所有としても構いませんし、長男の単独所有としても構いませんし、相続人全員で共有にすると決めても構いません。

ただし、共有状態というのは紛争を惹起しやすいために、通常は、相続人の誰かの単独所有とすることが多いです。



相続登記においては、遺産分割協議が成立している場合は、遺産分割協議書又は遺産分割協議証明書を作成し、申請書に添付することとなります。

遺産分割協議書には、原則として、各相続人の印鑑証明書を添付することとなります。(遺産が1つの不動産のみであるようなケースでは、不動産の取得者の印鑑証明書は不要となります。詳しくは司法書士にご確認ください。)

登記原因証明情報としては、上述した戸籍一式と組み合わせて申請書に添付することとなります。

相続放棄申述受理証明書、通知書

相続人は、原則として、自分に相続があったことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所に申述することにより、相続放棄をすることができます。

相続放棄をすると、その相続人は、初めから相続人ではなかったものとみなされます。

つまり、放棄をした相続人は、プラスの遺産もマイナスの遺産(借金)も、全てを相続しなくなるということになります。

相続放棄をした者は、遺産分割協議の当事者となりません。つまり、相続放棄をした者以外の相続人の間で遺産分割協議をすることとなります。

相続登記の添付書類としては、以下の書類が該当します。

・相続放棄申述受理証明書

・相続放棄申述受理通知書

相続放棄申述受理証明書は、申述した本人以外に、他の相続人や債権者など利害関係を有する者も、申請して取得することができます。

また、相続放棄の有無については、相続人又は被相続人の利害関係者(債権者等)が、家庭裁判所に照会をすることもできます。

遺言書(公正証書遺言、秘密証書遺言)

遺言書を作成することによって、どの遺産をどの相続人が相続するのか、細かく指定をしておくことができます。

遺言のうち、公正証書遺言と秘密証書遺言は、公証役場の公証人によって作成されます。よって、後述する遺言の検認という手続きは不要となります。

遺産である不動産を、相続人の●●に相続させる、といった遺言書は、登記原因証明情報として申請書に添付することで、名義の移転が可能です。

遺言書がある場合、登記原因証明情報として、被相続人の出生から死亡までの戸籍一式は不要です。

必要となるのは、被相続人の死亡を証する戸籍と、遺言によって不動産を取得する相続人の現在戸籍のみとなります。

遺言書(自筆証書遺言)

遺言書には、公証役場を利用せずに、自筆によって作成する自筆証書遺言があります。

自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認という手続きを経ておかなければ、相続登記申請の添付書類として利用することができませんので、要注意です。

登記原因証明情報としては、検認調書又は検認済証明書に加えて必要となるのは、被相続人の死亡を証する戸籍と、遺言によって不動産を取得する相続人の現在戸籍となります。

上記の公正証書遺言等と同じく、被相続人の出生から死亡までの戸籍一式は不要ということになります。

相続分譲渡証明書

相続分の譲渡とは、遺産分割協議の前に、ある相続人が他の相続人又は第三者に対して、自分の相続分を譲渡することをいいます。

この相続分の譲渡を受けた者は、譲渡人の相続人としての地位そのものを取得することとなりますので、遺産分割協議に参加することが可能となります。

ですので、相続分譲渡は、遺産分割協議又は調停から離脱したい相続人がいる場合に、利用されることが多いです。



相続登記のあり方としては、相続分の譲渡後に、法定相続分での登記しても構いませんし、遺産分割協議をして登記をしても構いません。

登記原因証明情報としては、戸籍一式や遺産分割協議書(相続分譲渡をした者を除く相続人全員が合意したもの)と組み合わせて申請書に添付することとなります。

特別受益証明書

特別受益というのは、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため、若しくは生計の資本として贈与を受けたことをいいます。

特別受益がある場合は、被相続人の遺産に特別受益に該当する遺産を加える(=持戻計算)をすることが原則となります。

持戻計算された遺産を法定相続分で按分して各相続人の相続分が決定することとなります。そして、特別受益を受けた相続人の相続分からは、当該受益の金額が控除されます。



特別受益を十分に受けた相続人は、取得する遺産がなくなります。この場合には、その相続人からは、特別受益証明書を取得し、残りの他の相続人間で遺産分割協議をすることとなります。

登記原因証明情報としては、特別受益証明書に加え、戸籍一式、遺産分割協議証明書(特別受益者を除く相続人全員で合意したもの)となります。

遺産分割調停調書、審判書

遺産分割協議が任意で合意に至らず紛争となり、家庭裁判所の御厄介になるケースがあります。

家庭裁判所では、まずは遺産分割調停が実施され、不成立の場合には審判に移行します。

調停又は審判が成立した場合は、これを証明する遺産分割調停調書又は審判書を添付して登記申請することとなります。

通常は、調停又は審判の中で、被相続人及び相続人の特定について審査され、調書や審判書に記載されることとなります。よって、登記原因証明情報として、戸籍一式は不要となるケースが多いです。

ただし、調停調書又は審判書に、被相続人の死亡年月日の記載がない場合には、被相続人の死亡を証する戸籍が必要となります。

調停調書又は審判書に、共同相続人の記載がない場合は、各共同相続人の現在戸籍が必要となります。



以上、相続登記における様々な登記原因証明情報と手続きについて解説しました。

遺産分割協議書の作成や相続放棄の申述、相続登記申請等については、豊中相続相談所にご相談ください。

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