相続を争族にしないために遺言書を作成しましょう

相続した遺産の分割協議(分配)は、原則として、各相続人が話し合い合意することで自由に決定することができます。しかし、合意に至らない場合は、紛争となり遺産分割調停などを申し立て裁判所のご厄介にならざるを得なくなります。

遺言書を作成し、遺産をどのように分配するかをあらかじめ決めておくことで、遺産分割を巡る紛争を防止することができます。遺言書を作成しておくことは、自分の子や孫、兄弟姉妹の仲を引き裂かないために必要なエチケットだとも言えるでしょう。

ケース別 遺言書を作成すべき場合5選

  • 子がいない場合・・・子がおらず、ご両親が他界している場合は兄弟姉妹が相続人となります。配偶者がいる場合は、配偶者と自分の兄弟姉妹が協議しなければならなくなりますが、話し合いを持つこと自体が難しいケースも多いです。遺言書で遺産の行き先を指定しておけば、話し合いを回避できます。
  • 内縁関係のご夫婦・・・内縁の夫又は妻には相続権がありません。遺言書で遺産を相手に譲る旨を明確にしておきましょう。
  • 結婚した相手に連れ子がいる・・・結婚した相手の連れ子と同居し、本当の親子のように暮らしていらっしゃるケースも多くあります。しかし、連れ子には相続権がありません。養子縁組をしておけば相続権がありますが、縁組をしていないのであれば、遺言書を作成し、連れ子に遺産を譲る旨を指定しておく必要があります。
  • 結婚した相手に前妻との子がいる・・・前妻との子にも相続権がありますから、相続発生時には、遺産分割協議に参加してもらう必要が生じてしまいます。実の子と前妻の子との間での話し合いの回避のために、遺言書を作成しましょう。
  • 相続人がいない場合・・・子も親も兄弟姉妹もいらっしゃらない方の場合、遺産は最終的には国庫に帰属することとなります。友人やお世話になった方などに遺産を譲りたい場合は、遺言書を作成し指定しておく必要があります。

遺言書の方式とメリットデメリット

遺言書の作成には、普通方式と特別方式の2種類があります。通常時は、普通方式で遺言書を作成します。特別方式は、緊急時の遺言書の作成方法になります。

普通方式の遺言には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言、の3種類があります。

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
作成方法全文・氏名・日付を自書し押印する。(目録は印字も可)公証役場にて内容を口述し、公証人が作成する。(要事前打合せ)証書に署名押印して封筒に封印したものを公証役場にて公証人が証明する
証人の必要不要2名以上必要2名以上必要
検認手続き(家庭裁判所)の必要必要(法務局に保管した場合不要)不要不要
メリット・作成が簡便。費用も安い
・内容を秘密にできる
・法務局保管の制度あり
・形式と内容の適法性が担保される
・紛失や改ざんのおそれがほぼない
・内容の秘密が守られる
・保管の心配がない
デメリット・内容や形式が不適法で無効となるリスク ・紛失のリスク・内容が漏れるリスク ・費用がかかる・内容が不適法で無効となるリスク  

特別方式の遺言について

特別方式の遺言というのは、緊急時に普通方式で遺言できない場合のものになります。
特別方式には、①一般危急時遺言、②難船危急時遺言、③一般隔絶地遺言、④船舶隔絶地遺言があります。

いずれも、普通方式より簡易に遺言をすることができます。①②の危急時遺言については、後日家庭裁判所の確認を受ける必要がありますので要注意です。また、特別方式の遺言は、遺言者が普通方式にて遺言をできるようになってから6か月生存するときは、失効しますのでこの点も要注意です。

遺言書の作成を司法書士・行政書士に依頼した方がいい理由

  • 法律で守秘義務が課せられているので秘密が厳守されます。
  • 遺産に不動産が含まれる場合は、登記申請(名義変更)が論点となりますが、司法書士は登記の専門家ですので、登記が入るよう文言を調整できます。
  • 公証役場で遺言を作成する場合は、事前に打ち合わせが必要となりますが、代行するので安心で楽です。
  • 遺言書の内容や形式の適法性をしっかりチェックし、間違いないものを作成します。