遺産分割の際の遺産(不動産、株等)の価格の評価方法について解説
遺産の評価方法の決め方
相続が発生し、遺産の分配(=遺産分割)をする際に、問題となるのは遺産の評価額の決め方になります。
最もよく問題となるのは、不動産の評価方法です。不動産は、1物5価などと言われるように、色々な観点からの複数の評価方法があります(後ほど解説します)。
次によく問題となるのは、非上場株式の評価方法です。これについても、評価の手法が複数あり、常に決まった評価額に落ち着くわけではありません(後ほど解説します)。
結論から言ってしまうと、任意での遺産分割協議を行う場合は、遺産についてどのような評価額や評価方法を行うかについて相続人間で合意ができれば、その合意に従って採用すればよいことになります。
遺産の評価方法について合意できず、相続人間で遺産分割がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。その際の遺産の評価については、専門家の鑑定評価を取得することになります。
不動産については不動産鑑定士の、株については公認会計士等の鑑定評価書を取得します。ただし、鑑定評価には、通常数十万の費用がかかるため、対象不動産や株式がそれなりの価格水準のものでないと費用負担するメリットがないでしょう。
遺産の評価の時点
遺産の評価額は、常に変動していると言えます。例えば、令和元年に亡くなった方の遺産分割協議を令和3年に行う場合、どの時点で評価するかが問題となります。
実務上は、遺産分割をする時点の価格で評価をすることとなります。(価格の変動による不平等を避けることができるためです。)
なお、調停・審判において、特別受益や寄与分が問題となる相続では、相続開始時を基準として「みなし相続財産」を算出するので、遺産分割時に存在する遺産については、遺産分割時の評価のほかに、相続開始時の評価も必要となるので注意が必要です。
不動産の評価額
不動産には、以下の公的な評価額があります。
●公示価格・・毎年1月1日を基準として3月下旬ころに国土交通省から発表される。時価に近い。
●基準価格・・毎年7月1日を基準として都道府県から発表される。時価に近い。
●固定資産税評価額・・・各市町村が管轄し3年に1回評価替えがある。宅地は公示価格の7割の設定。建物は新築は時価より安く、耐用年数満了物件は時価より高く出る傾向にある。
●相続税評価額(路線価)・・・国税庁が管轄し、市街地は路線価方式により評価され、それ以外の地域は倍率方式により評価される。宅地は時価の8割の設定。
相当高額な不動産でない限り、任意での遺産分割協議においては、土地・建物とも、固定資産税評価をそのまま採用して合意することが多いように思われます。
相続税の申告がある場合は、税理士が遺産の評価をしますから、そのままそれを採用することが多いでしょう。
非上場株式の評価方法
非上場株式の評価方法には、以下のものがあります。
●純資産方式・・純資産額を発行済株式数で割る。
●配当還元方式・・会社の配当額を基準として、これを発行済株式数で割る。
●類似業種比準方式・・類似の業種の事業を営む会社の株式と比較して計算する。(事例を集める困難性あり)
●収益還元方式・・将来の予想年間税引後純利益を資本還元率で除して発行済株式数で割って評価する。
※詳しくは、税理士・会計士の専門となります。
以上、遺産分割における遺産の評価額の問題について解説しました。
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