預貯金口座の相続手続きの際の注意点とポイントについて解説
預貯金口座の凍結と対応
被相続人が亡くなって相続が発生した場合、まずは、故人の財産の洗い出しをして遺産総額を把握することとなります。
そして、ほとんどの場合、遺産に銀行や信用金庫、農協などの金融機関の預貯金口座が含まれています。
通常、口座名義人が亡くなると、金融機関にその旨を連絡した時点で口座が凍結され、預金を引き出すことはできなくなります。
ここで、凍結前の口座からキャッシュカードを使って預金の引き出しをしていいかどうかが論点となります。
故人の預金を勝手に降ろす行為は、親族相盗例により犯罪とはならないのかもしれませんが、後日の遺産分割協議において使途不明金となるなど、疑義を生じさせたり不法行為となる可能性がありますので、控えておくべきでしょう。
また、遺産の管理費(民法885①)や葬儀費用などを遺産から支出する場合は、必ず領収書を取って帳簿を付けておきましょう。後日の遺産分割協議により、精算する必要があるためです。
凍結された預貯金を引き出す方法
相続の発生により凍結された預貯金を引き出す方法は、次のとおりとなります。
・遺産分割協議成立前の預貯金の仮払い制度の利用
・遺産分割協議又は調停・審判を成立させ金融機関の指定の相続手続きを取る
・遺言書に基づいて金融機関の指定の相続手続きを取る
・法定相続分にて金融機関の指定の相続手続きを取る
・裁判所から仮分割の仮処分
以下、ピックアップして解説します。
預貯金の仮払い制度の活用
預金の仮払いの制度は、相続発生後、遺産分割協議成立前に、葬儀費など急ぎで遺産から資金を支出する必要に応じるため設けられた制度です。
仮払いの制度を使えば、規定されている限度額までは預金を引き出すことができます。
限度額は、①法定相続分×1/3×預金額、②150万円のいずれか低い額となります。限度額は、金融機関ごとに計算します。
(※法定相続分については、こちらをご覧ください。)
例えば、父が亡くなり、遺産がA銀行の預金600万円あり、相続人が母と長男の二人である場合を考えます。
母が預金の仮払いを金融機関に請求するのであれば、
①600万円×1/2×1/3=100万円と、②150万円、を比較して低い方である100万円が仮払額の限度となります。
仮払い制度利用の注意点としては、その態様によっては、遺産を処分した(=単純承認)として相続放棄が認められなくなるケースがあり得ることです。
相続放棄をすることをご検討の場合は、単純承認とならないかどうか弊所の司法書士などの専門家にご相談ください。
遺産分割協議・遺言に基づいて預貯金の解約手続きを行う場合
預貯金口座については、平成28年の判例により遺産分割の対象であることが明確となりました。
法定相続分どおりで分ける場合以外は、遺産分割協議書を作成し、相続人全員で署名・実印で押印することが必要となります。
遺言がある場合は、遺言の内容に従って、各相続人が預貯金などの遺産を取得することとなります。
遺言書がない相続のケースの方が件数としては多数派ですので、どの相続人がいくら預金を取得するかを話し合いで決める必要が生じることが多いでしょう。
遺産分けの話し合いの前に専門家である司法書士に相談頂くこともできますし、遺産分けが円満に決まって遺産分割協議書という書面を作成する段階で司法書士に相談することもできます。
もちろん、金融機関への申請手続きを弊所にご依頼頂くこともできます。
遺産分割協議書の作成が完了したら、金融機関指定の方式に従って、解約手続きを取ることとなります。
必要となる書類は、
・被相続人の出生から死亡までの戸籍一式
・相続人の現在戸籍
・遺産分割協議書
・(あれば)遺言書
・印鑑証明書
・指定の届出書(申請書)など
になりますが、事案によって異なりますし金融機関によっても異なりますので、弊所の司法書士にご相談ください。
法定相続分どおりで預金の解約をする際の注意点
法定相続分どおりに預貯金を分配して解約する場合は、上記の遺産分割協議書は必要ありません。
この場合は、金融機関指定の申請様式に各相続人が実印で押印することとなるケースが多いです。(金融機関により異なります。)
ただし、この場合の注意点は、万が一、戸籍調査にミスがあって隠れた相続人がいることが発覚した場合は、全てやり直しになる可能性があるということです。
弊所でも、「自分で相続対応をしたところ、金融機関から新たな相続人がいるとの指摘を受けて困っている」とのご相談を受けたことがあり、改めて遺産分割協議をやり直す対応を取ったこともあります。
法定相続分どおりの分配だから簡単であるとも言えませんので、まずは弊所の司法書士にご相談ください。
以上、預貯金の相続手続きのポイントと注意点について解説しました。
預貯金の相続手続きは、豊中相続相談所(豊中司法書士ふじた事務所)にご相談ください。