相続放棄とは?よくある誤解
相続放棄とは、家庭裁判所に申し立てを行い、初めから相続人とならなかったこととなることによって、被相続人(故人)の遺産の一切の承継を放棄することです。つまり、相続放棄によって、プラスの財産も、マイナスの財産(借金や債務)も全て、放棄し相続しないこととなります。
よくある誤解としては、故人にプラスの財産がある場合に、その遺産分けの話し合い(遺産分割協議)において、何も取得しないことを「相続放棄」と言う方が多いのですが、これは、法律上の正式な相続放棄ではなく、被相続人に借金等の債務がある場合には、相続してしまうので、要注意です。
相続放棄をした方がいい場合は?
相続放棄をすると、被相続人に不動産や預貯金がある場合は、そのプラスの財産も放棄してしまうこととなります。では、相続放棄をした方がいい場合というのは、どういうときなのでしょうか?
- 被相続人の遺産において、明らかに借金の方が多い。
- 被相続人にプラスの遺産はほぼなく、隠れた借金が不安。
- 相続人のうち、特定の者に遺産を集中して相続させたい。 等々
相続放棄には期限がある?
被相続人(故人)が亡くなったことを知ってから、3か月以内に、相続を承認するか(単純承認)、相続放棄をするか、限定承認をするかを決める必要があります。(なお、限定承認というのは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を承継する手続きになります。)
つまり、相続放棄は、被相続人の死亡後、相続が生じたことを知ってから3か月以内に行うことが原則となります。
なお、「知ってから」3か月以内ですから、例えば、被相続人が令和3年10月1日に亡くなり、亡くなったたことを令和4年1月5日に「知った」のであれば、令和4年4月5日までなら、通常通りの相続放棄を行うことができるということになります。
3か月過ぎた場合、相続放棄はできるのか?
では、相続を知ってから3か月という期限を過ぎてしまった場合は、相続放棄はできないのでしょうか?まず、期限が過ぎそうな場合は、期限の延長をする申立てが可能ですから、遅れずに家庭裁判所に対して、延長の手続きを取ればいいことになります。
次に、既に期限の3か月を過ぎてしまった場合ですが、一定の要件を満たすことによって、相続放棄が可能となるケースがあります。
最高裁の判例によると、以下のような要件を満たすことにより、相続放棄が認められる可能性が生じます。
- 相続が生じた際に、被相続人に遺産が全くないと信じた
- 上記のように信じることに、十分な理由がある
- 相続時の事情から、遺産の調査をすることが著しく困難であった
なお、上記の要件を満たすかどうかについては、複雑な判断が必要となりますので、弊所の司法書士にご相談ください。
相続放棄が認められない場合は?
相続放棄を家庭裁判所に申述した場合、ほとんどのケースで認められて受理されるのですが、以下のような相続を単純承認したような場合は、相続放棄が認められなくなりますので、要注意です。
- 相続人が遺産を処分したとき
- 相続人が遺産を隠し、私に消費し、遺産を隠すつもりで目録に記載しなかったとき(相続放棄の後に、このような行為を行った場合を含みます)
- 相続放棄を証明する書類の取得
相続放棄が家庭裁判所に受理されると、相続人の所に、「相続放棄申述受理通知書」という書面が届きます。これが、相続放棄がなされたという証拠書類ですので、大切に保管し、被相続人から弁済を請求された場合には、提示する必要があります。ただし、この「相続放棄申述受理通知書」は1通しか発行されません。
そこで、複数の債権者等に相続放棄をした証拠書類を提出する必要がある場合は、家庭裁判所に申請することにより「相続放棄申述受理証明書」を取得することができます。これは、何通でも取得できますので、必要に応じて申請します。