自筆証書遺言の検認手続きと注意点について司法書士が解説
近年、終活ブームの高まりとともに自筆証書遺言を書く方が増えています。令和2年の改正で新設された「自筆証書遺言保管制度」を利用すれば検認が不要になりますが、自宅・金庫で保管している遺言は、相続開始後に必ず検認を経なければなりません。
「検認って大げさでは?」「相続人全員に知られたくないのだが…」と相談を受けることもしばしば。本稿では制度の概要と実務上のポイントを解説します。
検認とは
検認(民法1004条)は、家庭裁判所が自筆証書遺言の「形状・訂正箇所・日付・署名押印」などの現状を確認し、調書を作成してする証拠保全手続です。
- 目的:遺言書の偽造・変造防止、証拠保全
- 誤解しやすい点:検認は遺言の有効/無効を判断しません。有効性は別途「遺言無効確認訴訟」などで争われる可能性があります。

検認申立ての流れ
手続ステップ | 概要 |
---|---|
①遺言書の発見・封印保持 | 見つけたら開封せず封筒ごと保管。開封すると過料のリスク |
②検認申立て | 遺言書を発見した相続人又は遺言書の保管者が家庭裁判所へ申立書を提出 |
③裁判所による相続人調査 | 提出された戸籍で相続人を確定 |
④相続人全員への「呼出状」送達 | 期日・持参物を記載した呼出状が全相続人に郵送される。「出頭は任意」だが通知は必須 |
⑤検認期日(開封・調書作成) | 裁判官又は書記官の立会いで開封し、検認調書を作成 |
⑥検認済証明書交付 | 遺言書に検認済証明書が合綴される |
相続人への通知を避けたい場合
検認では相続人全員に必ず呼出状(期日通知)が届きます。これを避けたい、若しくは遺言書の内容を他の相続人に知られたくないといった場合は、公正証書にて遺言書を作成する必要があります。
- 公正証書遺言
- 公証人が関与して作成・原本を保管。検認不要のうえ、方式欠缺による無効リスクが極小。
- 相続人が公証役場で謄本を取得するまで内容は知られません。
なお、法務局による自筆証書遺言保管制度を利用しても検認は不要となりますが、遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付があったときに、全相続人に通知がなされますので要注意です。
検認を経ないとどうなる?――リスクとトラブル
- 過料リスク:検認前の開封・執行は5万円以下の過料のリスクがあります
- 手続障害:相続登記や相続による預貯金払戻では検認済証明書が必須。名義変更が進まず相続税申告が遅延するおそれも
- 紛争誘発:開封・改ざん疑義から遺言無効確認訴訟へ発展する例も

検認後の相続手続き
- 不動産登記(相続登記)
- 遺言書を申請書に添付することで相続登記が可能ですが、遺言書には検認済証明書が合綴されている必要があります。
- 預貯金の解約
- 預貯金の相続による解約についても、遺言書の提出で手続きが可能ですが、遺言書には検認済証明書が合綴されている必要があります。
まとめ
自筆証書遺言は作成コストが低く手軽に利用できる半面、「相続人全員への呼出状→検認→証明書取得」という手続きを経なければ実行できません。
通知を避ける、あるいは形式面の安全性を高めたい場合は、公正証書遺言の活用を検討するとよいでしょう。相続人同士のトラブル防止と円滑な名義変更のためにも、検認は重要な意味のある手続きです。
検認の申立て手続きについては、豊中相続相談所(豊中司法書士ふじた事務所)へご相談ください。