遺産分割協議がまとまらないときの方策は、遺産分割調停・審判の申立て
相続において、残された遺産をどのように分けるか、つまり遺産分割協議は、相続人全員が合意できる限りにおいて、自由に配分を決めることができます。
しかしながら、相続人間で話し合いがまとまらないケースが、全体の1~2%程度ですが発生します。相続を巡り紛争となった場合、家庭裁判所に、遺産分割調停又は審判を申し立てて、事件の解決を図ることになります。
調停・審判を利用した方が良い場合の紛争の典型例は、以下のようなものになります。
- 自宅不動産を継ぐ者は決まっているのだけれど、評価額をいくらにするかで揉めてしまい、遺産の分配が決まらない。
- 故人が生前に、ある相続人にまとまった額を生前贈与(=特別受益)しているため、遺産分割協議において、どのように評価して反映するかで、揉めてしまっている。
- 相続人の一人が、親の介護をしたという理由で「寄与分」を主張しているため、揉めている。
遺産分割調停の特徴
遺産分割調停は、家庭裁判所において、裁判官1名・調停委員2名で構成される調停委員会により行われます。裁判所で行う手続きではあるのですが、簡単に言うと、調停は当事者間の合意を目指した話し合いです。
ですので、法律の規定により、決まった結論が出るというものでもなく、柔軟な解決が図れるのが特徴です。
調停の期日は、概ね月に1回程度実施され、半年~1年程度かかるケースが多いようです。話し合いの進行は、調停委員が法律を道しるべにした形で仕切ってくれますので、その点はご安心下さい。
また、話し合いとはいっても、原則として、当事者が交互に調停室に入りますので、顔を合わさずに進行していくものとなります。(但し、初回は顔合わせをする場合もあるようです。)
通常は、遺産分割調停を申し立てて、調停が不成立になったら審判に移行することとなります。法的には、最初に審判を申し立てることもできるのですが、多くのケースで、付調停となり、結局まずは調停から行う、ということとなるようです。
遺産分割審判の特徴
遺産分割調停が不成立に終わると、自動的に、審判手続きに移行することとなります。審判の期日は、1~2か月に1回程度設けられ、半年程度で終了する事件が多いようです。
審判では、当事者は積極的に主張と立証を行い、裁判官が法律の規定に当てはめて検討して、判断を下すこととなります。
なお、遺産分割審判は、通常の民事訴訟とは異なり、裁判所に職権で証拠を調べる権限がありますので、当事者には、主張立証の義務はありません。けれども、審判を有利に進めるために、積極的に、主張・立証を行うべきだとは言えます。
遺産分割調停の申立書の作成と必要書類
遺産分割調停を利用する際には、管轄の家庭裁判所に、申立書類一式を提出する必要があります。司法書士には、金額の大小にかかわらず、裁判所に提出する書類の作成権限がありますので、ご依頼者様の本人での調停・審判を支援しサポートすることができます。
遺産分割調停の申し立てに必要な書類は、以下のとおりです。(大阪家庭裁判所の例となります。)
- 申立書一式(申立書、当事者目録、遺産目録、相続関係図)
- 上記申立書一式の写し×相手方の人数分
- 事情説明書、連絡メモ
- (必要な場合のみ)資料非開示の申出書
- 収入印紙(被相続人一人当たり1200円)
- 郵便切手(裁判所に要確認)
- 相続関係確定に必要な戸籍除籍謄本一式
- 被相続人の戸籍附票又は住民票除票
- 相続人全員の戸籍附票又は住民票
- (遺産に不動産がある場合)登記事項証明書及び評価証明書
- (遺産に借地借家権がある場合)契約書、登記事項証明書、評価証明書
- (遺産に預貯金がある場合)残高証明書又は通帳の写し等
- (遺産に国債、株、投信、出資金等がある場合)内容が特定できる金融機関発行の証明書の写し
- (遺産に自動車、保険等がある場合)自動車登録事項証明や保険証書の写しなど
- (ある場合は)相続税の申告書の写し
- (ある場合は)遺言書の写し